大判例

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東京地方裁判所 昭和52年(モ)8151号 判決

〔仮処分事件〕

〔主文〕

債権者と債務者間の東京地方裁判所昭和五二年(ヨ)第二五一七号不正競争仮処分申請事件につき、当裁判所が昭和五二年五月二五日なした仮処分決定は、これを認可する。

訴訟費用は債務者の負担とする。

【判旨】

一債権者がナツト及びスポツト溶接機用ナツト供給装置の製造販売等を営む株式会社であり、債務者が長尾製作所の名称の下で個人営業としてスポツト溶接機用ナツト供給装置の製造販売を営んでいる者であることは、当事者間に争いがない。

右事実によれば、債権者は債務者との関係で不正競争防止法第一条第一項第六号にいう、競争関係にあるものということができる。

二<証拠>を総合すれば、次の事実を一応認めることができる(ただし、当事者間に争いのない事実を含む。)。

1 債権者は、昭和五一年一月初旬ころより、ダイハツ工業株式会社との間で本件製品の売買取引の交渉を行い、その際本件製品を、試用のために、一時、同会社へ提供していたところ、同会社は本件製品の試用の結果が良好であつたところから、本件製品を数台購入する方針を立て、その旨を債権者に伝達したが、その後において、債務者より本件製品が債務者の有する特許権に抵触する旨警告されたため、本件製品の購入を差し控え、また試用のため提供を受けていた本件製品を債権者に返還したこと。

2 債務者は、昭和五二年二月ころ、本件製品の買受先である東洋興産、三浦工業、呉鉄工所ほか数か所を訪問して本件製品が債務者の有する特許権に抵触する趣旨の陳述をしたこと。

3 債務者は、代理人をして、昭和五二年三月一一日付内容証明郵便をもつて、債権者の取引先である株式会社末冨商会に対し、同社による本件製品の販売が本件第二特許権を侵害しているから、その販売を直ちに停止すべき旨の警告をなさしめたこと。

<証拠>はいまだ右認定を左右するに足りず、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。

三ところで、右に認定した1ないし3の債務者の行為は、本件製品が本件第一、第二各特許発明の技術的範囲に属することを前提とするものであることは、右認定から明らかである。そこで、まず、本件製品が本件第一、第二各特許発明の技術的範囲に属するか否かについて判断する。

1ないし5<省略>

してみると、本件製品は本件第一特許発明その1、同その2、本件第二特許発明の各技術的範囲に属しないから、債務者のなしたところの、本件製品が右各特許発明の技術的範囲に属することを前提とする趣旨の前記警告等の行為は、真実に反することをその内容とするものであつて、しかも右警告等の行為が債権者の営業上の信用を害するものであることは、右警告等の行為の内容自体から明らかである。

したがつて、前記認定にかかる二1ないし3の行為は、不正競争防止法第一条第一項第六号にいう、他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を陳述する行為に該当するといわなければならない。しかして、前記認定にかかる二1の事実及び本件口頭弁論の全趣旨によれば、債権者は債務者による右虚偽の事実の陳述行為によつて現に営業上の利益を害され、また害されるおそれがあるものと認められる。

四債務者が、前記認定にかかる二1ないし3の如き不正競争防止法第一条第一項第六号該当行為をなし、本件製品が本件第一、第二各特許発明の技術的範囲に属すると主張して争つていることに鑑みれば、債務者は、債権者において本件製品を製造販売することが本件第一、第二各特許権を侵害する旨の虚偽の事実を陳述しあるいはこれを流布するおそれがあるものと認められるところ、右行為がなされた場合に債権者が営業上の損害を受けることは容易に推認できるから、債権者において不正競争防止法第一条第一項第六号により右行為の差止めを求める仮処分の必要性があるものと認められる。

(秋吉稔弘 塚田渥 水野武)

(別紙)仮処分決定

〔主文〕

債務者は、債権者の製造販売する別紙目録記載の製品が登録第七四〇二九〇号特許権および登録第八二一〇〇六号特許権を侵害する旨を、需要者その他の取引関係者に対し、口頭または文書により陳述し、流布してはならない。

(別紙) 目録<省略>

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